YouTube "AI 生成音楽" の分野での主導権を獲得するため、現在ソニー・ミュージック・エンターテインメント、ワーナー・レコード、ユニバーサル・ミュージック・グループという大手3レーベルとのライセンス契約交渉の真っ最中であるとのことだ。

AI スタートアップ企業の Suno と Udio が著作権のある膨大な量の音楽を許可なく使用し、テキストから音声への変換モデルをトレーニングし著作権法に違反したとして、米国レコード協会(RIAA)が先頭に立ち訴訟を起こしている前例がある中、YouTube は適切なライセンスを取得することで同様の問題が起きるのを未然に防ごうとしているようだ。

Financial Times の報道によると、YouTube は大手レコード会社に多額の一時金を支払って音楽のライセンスを取得させ、人気アーティストのスタイルを複製できる AI ツールが倫理的かつ合法的に開発されることを保証しているとのことだ。このアプローチは、レコード会社と Meta や TikTok 等のソーシャルメディアプラットフォームとの以前の合意を反映しており、継続的なロイヤリティではなく、一回限りの支払いに重点を置いている。

YouTube は、昨年11月に、選ばれたクリエイターグループが Charli XCX や John Legend 等のスーパースターを模倣した30秒のオーディオ・クリップを生成できるプロジェクト「Dream  Track」を立ち上げた。今のところ、YouTube が Dream Track を拡大するという予定は聞こえてこないが、アーティストやレーベルから必要な許可を得ることができれば、AI 主導の新たな音楽プロジェクトを模索することには熱心ではあるようだ。

Financial Times によると、YouTube の交渉の重要な側面は、"アーティストごとのライセンス取得" であるが、AI 生成の音楽を取り巻く倫理的懸念を考慮すると、これは困難となる可能性も高い。今年初めには、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)や FINNEAS(フィニアス)、Chase & Status(チェイス・アンド・ステイタス)等200人を超えるアーティストが、人間の創造性を保護するためのより厳しい規制を求める公開書簡に署名しており、Grimes(グライムス)等 AI に対してオープンな一部のアーティストを除き、やはり多くのアーティスト側からの AI に対する拒絶反応は少なくはない。

このような課題にもかかわらず、YouTube の取り組みは、音楽業界が AI に適応する方法の前例となる可能性もある。一括払いを提供し、個々のアーティストが AI プロジェクトで自分の音楽を使用することを選択できるオプトインモデルを実装することで、YouTube は AI 生成コンテンツに関連する多くの敏感な問題に対処するために型破りなアイディアを持っているようだ。