先日行われたイギリスの総選挙の結果、Keir Starmer 率いる野党の労働党が圧勝し、14年間続いた保守党政権が終わりを告げた。それを受けて、イギリスの音楽業界は歓迎ムードで沸いている。

それというのも、保守党政権の下で、ここ最近のイギリスの音楽業界は非常に厳しい苦難の年が続いていたためである。2023年は英国の「会場閉鎖の最悪の年」であると言われ、125もの小規模ベニューが閉鎖されたことが明らかとなっている。また、フェスティバルシーンも同様で、2024年には50以上の夏のフェスティバルが開催中止を余儀なくされたとのことだ。それらの理由には、制作費や生活費の高騰が続いていたことが挙げられる。

関連記事
>>2023年に125の小規模ベニューが閉鎖したイギリス、2024年も閉鎖の波は収まらず…マンチェスターの DIY ナイトクラブ「Partisan Collective」も今月末に閉鎖へ

>>イギリスでは過去5年間で約170以上のフェスティバルが中止となっていることが明らかに…この夏は約40ものフェスが姿を消す


この政権交代について、998年に設立された非営利の業界団体で、レーベルやアーティスト、ディストリビューター等がメンバーとして参加する Association of Independent Music(AIM/インディペンデント系音楽協会)の暫定 CEO/最高制作責任者の Gee Davy 氏は、以下のような声明を発表している。

世界的に評価されているイギリスのインディペンデント系音楽業界を代表して、新労働党政権に祝意を表する。英国の各地域や国を音楽ビジネスの成長と拡大、そして音楽業界での持続可能なキャリアを築くのに最適な場所にするという目標を達成するために、新たに選出されたすべての国会議員と新内閣と共に取り組むことを楽しみにしている。

主な対策としては、映画やゲームと同等のクリエイティブ税控除に音楽を最終的に含め、世界に誇る英国の音楽シーンへの投資を奨励すること、中小企業の見習い機会を解放すること、英国の音楽とミュージシャンを保護し、育成する AI の責任ある開発を奨励すること等が挙げられる。


また、Night Time Industries Association(NTIA/ナイトタイム産業協会)の CEO である Michael Kill 氏も以下のようにコメントしている。

新労働党政権を温かく歓迎する。英国の経済と文化にとって不可欠な我々の業界に対する皆さんの取り組み。しかし、本当の仕事はこれから始まるのだ。

我々の業界は深刻な課題に直面しており、生活費の高騰とパンデミックによる長年の配慮不足から回復するために緊急の対応が必要だ。

我々の業界は、新政府との信頼を再構築する必要がある。長年、誤解され、過小評価されていると感じてきた後で、我々はナイトタイム経済の価値に関するストーリーを変え、あらゆるレベルでより強力な代表を確保し、より根付いた規制システムを構築するために努力しなければならない。また、税の格差に対処し、事業税率を改革し、独立事業者を保護し、VAT を欧州基準に合わせる必要がある。

新政府は、現在の多数派と共に大きなチャンスを前にしている。意味のある取引上の変化の機会がある。我々は、意味のある制作変更、戦略的で的を絞った財政支援、そしてナイトライフの未来を形作るための協力的な取り組みを、新政府に優先させる必要がある。これにより、ナイトタイム産業の持続可能で繁栄した未来が保証されるだろう。

また、英国の商業音楽業界の製作者側の集合的利益を代表する団体である UK Music の最高責任者 Tom Kiehl も、労働党 の勝利を祝福し、イギリスの音楽産業を後押しするためには変革が必要であるという他の人物たちの意見に同調した。

新労働政権は、産業戦略の一環としてクリエイティブ部門の計画を実行するという公約で選出された。この計画の中心には、成長に貢献する英国の音楽産業の可能性がなければならない。

音楽産業は多くの問題に直面しているが、チャンスも抱えている。UK Music と新政府との強力な関係は、この10年間の残りの期間を乗り切るために不可欠となるだろう。

音楽産業の集合的な声として、UK Music は既にサー・キール(労働党を率いる Keir Starmer のこと)のトップチームと強いつながりを持っている。我々の計画は、こうした関係を引き続き構築し、多くの新しく選出された国会議員を含む政治的スペクトル全体と協力し、世界をリードする我々のセクターに真の変化とさらなる成長をもたらすことだ。

更にロンドンのナイトクラブ等でも、労働党の勝利を祝福したイベント等も開催されており、イギリスの音楽シーンは明るい未来に向けて盛り上がっているようだ。