フランスを拠点とする定額制音楽ストリーミングサービス Deezer の調査によると、ほとんどのリスナーは人間のアーティストが作った音楽と完全に AI が作った音楽の違いを確実に区別できないとのことだ。

この調査では、8ヶ国9,000人の参加者を対象に、3曲の音楽を聴かせ、どれが AI 生成音楽なのかを判別。その結果、リスナーの97%は完全に AI によって生成された音楽と人間のアーティストが作った音楽の違いを確実に区別できなかった。この結果は、AI には関心があるものの、音楽文化や音楽制作者への悪影響を懸念する声が高まっている現状を浮き彫りにしている。

なお、回答者の半数以上が調査結果に「不快感」を示し、人工知能に対する信頼感として「信頼」を挙げたのはわずか19%だったという。

Deezer によると、現在、同社のプラットフォームには毎日5万曲の完全合成トラックが配信されており、これは1日のアップロード量の3分の1以上を占めている。
同社は今年初め、AI アップロードの急増と早期検出ツールの導入について発表した際に、警告を発していた。

リスナーの間でも、AI が音楽の消費にプラスになるかマイナスになるかについて意見が分かれている。
約半数が AI によって音楽の発見が容易になると考えているが、大半はストリーミングプラットフォームに低品質でありきたりなリリースが溢れかえっていることを懸念しており、また約3分の2は、AI が全体的な創造性の低下につながる可能性があると考えている。


音楽の視聴行動についても変化が見られる。ストリーミングユーザーの40%は「そのトラックが実際のアーティストによって制作されていない(AI生成トラックである)と気づいた瞬間にスキップする」と回答している。

この調査で浮き彫りになった業界全体の懸念は深刻だ。世界中のクリエイターの権利を保護し、著作権使用料の適正な徴収と分配を推進することを目的とする、国際著作権管理団体連盟(CISAC)と、フランス発の国際的戦略コンサルティングファーム PMP Strategy の調査によると、AI 生成の作品の増加により、2028年までに様々なジャンルのクリエイターの収益の約4分の1が消失する可能性があると推定されている。

Deezer は現在、ユーザー向けに AI 生成楽曲にタグをつけている唯一の大手ストリーミングサービスだ。また、これらの楽曲はアルゴリズムによるレコメンデーションやプレイリストから削除されている。
これは、AI コンテンツによるロイヤリティプールの希薄化を防ぐための措置だ。同社は、AI 生成楽曲の再生回数の大部分は不正行為である可能性が高いため、疑わしい行為は支払い対象から除外されていると主張している。

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