オーストラリア・メルボルン大学で Matchplus.ai ※ プロジェクトを運営するフェリシティ・ベイカー教授による、認知症患者の興奮を予測するウェアラブルセンサー開発に対し、Google が130万ドル(約2億8万円)の資金提供を行った。同プロジェクトでは、AI(人工知能)により認知症患者の興奮を15分早く予測し、アルゴリズムで選曲された音楽で患者を落ち着かせる “ウェアラブルデバイス” を開発しており、ベイカー教授のチームは、Google の慈善資金獲得を競う800以上の応募者の中から選出された。

※主に認知症ケアにおいて、ウェアラブルセンサーと AI を活用し、患者の興奮や苦痛を事前に検知・緩和する音楽療法を提供するシステム

ベイカー教授のチームは、このウェアラブルセンサーを使用することで、徘徊を始めたり、立ち上がって転倒したり、老人ホームの他の入居者にぶつかったりという患者の行動を予測できるアルゴリズムを開発中であるとのことで、システムに搭載された AI により、問題行動の5~15分前に生理学的変化を検知し、発作を防ぐためにパーソナライズされた音楽が自動的に再生されるという。

この技術は、高齢者介護施設における向精神薬への依存を減らす可能性がある。ベイカー教授によると、より難しい課題は、AI にどの曲を選ぶべきか、どのように曲順を並べるべきか、そして様々な神経症状に合わせてどのように調整すべきかを教えることだという。


一方カナダでは、モントリオール大学の神経科学者シモーネ・ダラ・ベラ教授が共同設立したスタートアップ企業 BeatHealth が、パーキンソン病患者向けに、歩行速度を音楽のテンポを用いて調整するアプリを開発中だ。
同社が開発するアプリ「BeatMove」は、ユーザーである患者の歩行速度を速める際には速度を上げ、患者が疲れると速度を落とし、歩行速度を調整する。現在、フランスの臨床試験では、公園でこのアプリを使用することにより、患者が歩行速度を改善できるかどうかを検証中であるという。

シモーネ・ダラ・ベラ教授は「BeatMove」について以下のようにコメントしている。

自分が選んだ音楽を BGM に流していて、その音楽が自分のペースより少し速いので、少し速く走りたくなる、そんな状況を想像してみてください。
でも、疲れてペースを落とすと、まるで仮想のパートナーと一緒に走ったり歩いたりしているかのように、音楽が優しく追従してくれるのです。

音楽療法自体は、臨床現場で数十年前から行われてきているが、デジタルツールと AI の登場により、これらの治療がマンツーマンで行うものから規模を拡大することが可能となり、その結果、薬物依存や医療費の削減につながる可能性が出てきた。しかし一方で、これまでのような人間のセラピストではなく、アルゴリズムがその代替となった場合、治療の質をどのように維持するかという問題も浮上しているため、今後はそういった面での研究も進められていくことだろう。