その緻密に構築されたアルバムの楽曲群をどんなバンドサウンドに仕立てるのか、「生と死」を問うた世界観は生身のライブにおいていかに表現されるのか。アルバムの完成度が高いからこその注目が集まるなか、この日約3,000人(ツアー総動員では1万3,000人)のオーディエンスはそれぞれの想像をはるかに超える光景を目の当たりにすることになった。
紗幕の向こう側にSKY-HIシルエットが浮かびあがる“フリージア ~Prologue~”の演出で神々しいまでのオープニングを迎えると、「君の!君の!君の人生をひっくり返しにきた!」という宣言とともに“トリックスター”を始め新旧のパーティチューンを連続投下。バンドとのタイトなグルーヴをつくりながら、高度なラップを(さらに、フックでは歌いあげたり!)繰り出し、且つ、ダンサーを従えて目一杯踊るという離れ業はまさに天はSKY-HIに二物も三物も与えたのではないかという印象を与える。一気にヒートアップさせたあとは、“LUCE”、“Young , Gifted and Yellow”、“As a Sugar”、“F-3”、“Enter the Dungeon”など、新しめの楽曲でゆったりさせたり、シリアスなリリックを畳みかけたりと、緩急自在なステージングで終始圧倒。
おなじみのSKY-HI BANDは前回ツアーでのギター、ベース、ドラム、キーボード、ホーンセクション(Tp, Sx, Tb)、DJに、新たにコーラス2名が加わり、もはやバックバンドを背負ったラッパーという域を越え、SKY-HI自身によって完全にステージがコントロールされていた。このあたりのSKY-HI自身による徹底したライブの作り込みについては、5/11発売のニューシングル「クロノグラフ」にライブリハーサルの模様が収録された「ツアーメイキング映像」があるので、SKY-HIのこだわりっぷりを覗くことができるだろう。
ライブ終盤では「『カタルシス』をリリースした後、どうしてもこのツアーに間に合わせたくて作りました」という言葉とともに新曲“クロノグラフ”を披露。別れの曲でありながらも、どこか前向きで温かみを孕んだ歌詞とサウンドだ。生きる死ぬの生死観を歌ったアルバム「カタルシス」を経て、次なるシングルで“別れ”を綴ったSKY-HIの境地とはどんなものだろうか...。
MCで「別れは悲しくて寂しいけど、そんな別れを愛する歌です」と語ったように、この曲の温かみにはそんな奥深さが寄り添っていることをしっかり感じさせてくれるパフォーマンスとなった。早くも新たな名曲の誕生かもしれない。