グラミー賞を主催する「The Recording Academy」CEO の Harvey Mason Jr. 氏が、Billboard のインタビューの中で「音楽制作における AI の使用がグラミー賞への応募資格を失うわけではない」と明言し、音楽業界に波紋を広げた。

歌詞の生成やサウンドデザインのアイディア創出、ワークフローの効率化等に AI を活用するプロデューサーの数は年々増えているが、その一方で AI の使用に関しては数々の議論を巻き起こしている。
しかし Harvey Mason Jr. 氏は「グラミー賞への応募作品が人間によって意義深い形で貢献され、適切なカテゴリーにエントリーされている限り、グラミー賞は AI の支援を受けて制作された作品を自動的に失格にするわけではない」と明言、彼はまたこうした議論が「(彼の)仕事の中で最も難しい部分」であると認め、”創造性の拡張” と ”創造性の置き換え” の間の曖昧な境界線を指摘した。

確かに、レコーディングが失格になる要因は存在する。
違法行為や、アーティストに保護されるべき影響を与える行為であれば、それを避けるためにできることはある。しかし、それら全てが非常に曖昧になりつつあり、これまで以上に明確化が必要だ。

近年のグラミー賞は様々な改革に取り組んでおり、グラミー賞の投票者の70%以上が2019年以降に加入しているなどし、世界的な代表性が高まり、これまで見過ごされてきたアーティストたちとの関係が改善されつつあると考えられている。

Harvey Mason Jr. 氏はまた「音楽消費の断片化は脅威ではなく、世界的な創造性を大きく促進するものである」という考えを強調。ファンはかつてない速さでニッチなサウンドを発見しており、この現実は The Recording Academy の会員募集や音楽の評価方法にも影響を与え、進化が期待されるジャンルへの対応をますます強化している。

音楽プロデューサーが既に最先端テクノロジーをクリエイティブツールの延長として捉えている業界にとって、今回の声明は The Recording Academy の運営団体が今後、ノミネートを評価する上での転換期となるのではないかと見られている。